2021.5.17 TV.Bros 5⽉号 岩井秀⼈連載『ワレワレのモロモロ外伝 「「もうその流れいらないよ」人生のルーチンが変わるとき」』

TV Bros.
文=岩井秀人

TV Bros. での岩井秀⼈連載『ワレワレのモロモロ外伝』 5 ⽉号が公開されました。
こちらでは冒頭部分をお読みいただけます。
記事全文が24日(月)17時まで無料公開中ですTV Bros. note版にてお楽しみください。


かつてない大掃除をした。今までも4~5年ごとに「断捨離」的に自室を掃除することはあったのだが、今回はそれとも違った。

基本、今年の頭までの男岩井の「物心ついて以来35年の気持ちの上がり下がりルーチン」は、「2年ほどやたら社会性を発揮して活動をしたのち、3ヶ月くらい全く社会性がなくなりゲームだけをやって引きこもる」ということを繰り返してきた。

そんな生活が、とうとう終焉を迎えたのだ。

何がきっかけだったのだろう。自分でもよくわからない。劇作家、俳優、というところからほぼほぼ足を洗ったのが去年の頭。新しい会社を立ち上げて、「ワレワレのモロモロ」や「いきなり本読み!」のような、はっきり演劇とも呼べないようなことを生業とし、好きなことが人生の70%くらいになってきた。それでも今年の頭に、ゲームだけをやり続ける時間が訪れたのは、「2年とその後の3ヶ月」の流れ的にはなんら不自然ではないことなのだが、なんというかどこかから「もうその流れいらないよ」「やらないでいいよその流れ」と言われているというか、「もっと単純に楽しく幸せになりなされ」という声に導かれたような気がする。

以前から、ゲームタームに入ってしまうのに、「部屋」の問題を感じていた。もともと引きこもっていた部屋には、引きこもりやすい生活導線が作られていて、ベッドから起きたら1、2アクションでタバコも飲み物もあるテーブルについてゲームを始められた。「ゲーム以外の何かをする」という選択肢を、極限まで削ぎ落とした配置がされていた。マウスを少しでも触れればゲームが始められるよう、常にパソコンもスリープ状態だった。そしてそのことをよしとする空気が、長い時間かけてその部屋には重く漂っていた。それはテーブルやベッドの位置を変えれば改められるような軽いものでなく、パソコンから離れた場所にある本棚に何年間もしまってある漫画やノートや画集や、謎の置物や画鋲で貼られた同級生の写真が、長らくその位置に固定されていることから来るオーラのようなものが集まり、主人である僕を部屋全体の重力によってゲーム前の椅子にのみ固定させるように静かに呼吸していた。

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